1.はじめに
第4次産業革命や人口動態の変化等を背景に付加価値の源泉は「資本」から「人材」に変化していること、更なるグローバル化の進展により人材に求められる能力要件も大幅に変化していること、そして我が国で企業が今後も持続可能に成長いていく上では、これまで以上に付加価値の担い手となる「人材」を確保し、活用することが生命線になることにより、G型企業ももちろんそうであるが、特に、人材確保問題が恒常的になっているL型企業(中小企業・小規模事業者、そしてベンチャー企業)においては、特に必要な「人材」を確保することが求められている。
一概にL型企業といっても、中小企業、小企業企業、ベンチャー企業それぞれによって、必要な人材要件は違ってくる。ここでは、それぞれの企業の人材要件を考察するということはなるべく避け、3企業類型に共通の「必要な人材」の確保の手法について提案しようと考えます。
なお、以下で提案する「人材」はL型企業である3類型企業だけに共通するものではなく、G型企業においても同様なものだと考えます。
人材の種類については、大雑把に分類すると、以下のとおり2類型に分けられます。1つは、経営の中核を担う、つまり所謂社長の右腕といわれる人材です。2つめは、事業の実行部隊である人材です。
2.中核人材確保について
ここ数年前から、注目されていると思います中核人材確保事業について、以下のことはとても重要な情報だと理解しているのでご紹介します。
地方創生が叫ばれている今日、地方の魅力を引き出す有能な人材を、都市部のG型企業で活躍していたキャえのリア人材(例えば、役職定年されているキャリア人材、定年退職されたキャリア人材)を地方創生したいという地域にプロジェクト型の雇用で柔軟に働いてもらうモデルです。以下詳しく述べます。
このモデルは、「信州大学モデル」と呼ばれているようです。
すなわち、地方創生したいという長野県松本市において、その地域の中小企業・小規模事企業に、都市部のG型企業で活躍していたキャリア人材をプロジェクトベースで兼業・副業という雇用で働いてもらうモデルです。
私が理解している内容は以下の点です。
このモデルのとても優れているところは、この地方の国立大学である信州大学が、都市部のキャリア人材を一旦地方創生するため、そしてその地域の地方創生の担い手である中小企業・小規模企業で効果的に働いてもらうために、大学の研究生として籍を置いてもらいリカレント教育や社会人基礎力教育等を学んでもらい、研究生はその肩書をもって、その地域の複数の中小企業・小規模企業に「同時」に赴き(兼業・副業)、経営指南等を与えるというモデルです。
そして、何よりも驚きなのは、信州大学において優秀な研究生として企業指南等を行った人を客員教員という肩書を与えるというモデルです。
このモデルは次の2点においてとても優れていると私は考えます。
ひと昔ならばG型企業の役職定年、定年した人材は、自社の子会社への出向ポストがありましたが、たぶん今は殆どないという現状に鑑み、人生100年時代でのマルチステージでの働き口として確保している点、それにより日本経済社会で減少する労働力を増加させ労働生産性を向上させることができるのはないかという点、また日本経済再生のカギを握ると私が考える「地方創生」にも寄与できるようにした点、最後に、地方創生の担い手であり恒常的な人材不足であるL型企業(中小企業・小規模企業)における人材確保に貢献し、「日本経済の活力の源泉」と謳われている、L型企業の成長に寄与している点は、素晴らしいと考えます。
このモデルのような動きがあると、日本経済再生の主体であると私は考えるL型企業(もちろん、ベンチャー企業も含む)における人材不足解消、加えてその成長、そして日本経済再生のカギであると私は考える「地方創生」を実現できる可能性が高くなると考えます。
この点は重要なので、最後に指摘しておきます。
実は、このような中核人材モデルについては、以下のような批判が一部ではあると思います。
すなわち、会社に指導・指南するだけであるのならば実はあまり効果はないと私は考えています(一部の研究者、企業も同様な考えを持っているところがあると聞いています)。
真の実効性ある人材支援というものは、そのL型企業の現場に入って、社員自らに、改善の糸口を考えさせ解を自らで発見させ、そのとおりに行動してもらうことだと考えています。
このような意味で、上記で紹介しているモデルが真に実効性があるかどうかを判断していく必要があると考えます。
※「我が国産業における人材力強化に向けた研究会(人材力研究会)」報告書(経済産業省・中小企業庁)より冒頭部分引用を行っています。