DXの目指すべき姿、その一つとしての「AI」経営について

イノベーション

私は、DXやAIについては、仕事で携わったこともないし、学術的な研究に従事したこともありません。
そのため、一部においては、いくつかの書籍を読んでのにわか覚えでお話することになります。誠に恐縮ですが、ご高配頂ければ幸いです。

私が理解した範囲で述べますと、DX推進の重要なキーワードは「デジタルツイン」という理解です。デジタルツインとは、「AI等に基づいたデにータにより定義された仮想空間上の現実空間のコピーから、様々な場面でのシュミレーションや予測結果を現実空間にフィードバックする方法論」であります(八子知礼「DXCXSX(2022)引用。以下の分でも多々引用)

つまり、今まで感覚に頼ってきた現場は予測をシュミレーションし全体最適化(部分最適化を踏まえて全体最適化)を図ることになります。

次はデジタルツインの事例について説明します。
人口減少は米国・日本をはじめ世界的に起こっている傾向です。このような現象の中においては現在ではL型企業を中心に極度の人手不足であります。

この環境下においては、L型企業に勤務されている方の大半は、アナログな作業を行っているのが概ね事実だと思います。

しかし、このデジタルツインを実現できれば、アナログで行ってきた非効率的な作業を劇的に減少させ、高度な結果予測を感知することでより効率的・合理的・効果的な結果が望めることになります。

このデジタルツインについては、今後、中長期的には、様々な産業で必要となってくると思います。遅かれ早かれ、原則1次産業から4次(又は5次)産業で行われてくると思います。

自動車産業を例にとり、CASEにおける「自動運転」に関して以下簡単に説明します。
既にこのページをご覧になられる方であれば、既にご存じの方が殆どだと思いますが、自動運転についてはMaaS同様、段階にレベルがあります。全く人間が関与しない自動運転になると、レベル5になります。
レベル5は、人間が自動車を制御させるのでなく、クルマが自らの動きを律する(制御)する必要があります。
つまり、特定のセンサーや機能に頼らず、複合的な組み合わせによって障害発生時に二重三重の予防効果としてのフェイルセーフを敏速かつ適切に行う必要があります。

このレベル5を目指すとなると、AIを駆使しヒューマン・マシン・インターフェースを作りこむという非常に難しい作業が必要となってきます。

このレベルを達成できるかどうかについては、どの国もまだ実現できていません。我が国が近い将来実現できるのかどうかですが、自動運転用の道路等を整備するというインフラ整備の問題、そしてなによりも自動運転で人身事故や物損事故等のトラブルがあった場合誰がどのような責任を負うのか等々についての法整備の問題があり、私は全ての車を自動運転車にするというのは難しいと思っています(この辺についての専門的に研究されている著名な研究者もほぼ同様なことを主張されていると理解しています)。

おそらく、自動運転化できるモビリティは、以下のとおりと考えています。
過疎化、高齢化が特に進んでいる地方都市において、これから特に重要な交通インフラとして重要であるバスなどが自動運転化になるであろう、いや、なるべきであると考えます。
つまり、公共交通機関で地域住民にとって特に利便性があるバスは、マイクロトランジットにするために、自動運転化するというのがせいぜいだと個人的には思っています。

さて、ここから前述したAIについて話を進めます。
AIが必要だ、早急に導入すべきであるといわれている中、例えばアメリカのテックジャイアント企業は、既に日々の業務でAIを使っている。一方、我が国はそこには到底及んでいない。
そして、経営に必要なのはスピード感と言われますが、その点についても日本は相当遅れていると考えられます。

事業価値を測る物差しは、今までは、市場のプレゼンス、市場の独占化の程度、そして例えば日本の自動車完成メーで例えると、「規模と効率」を追い求めることだった。しかし、現在は新しいゲームのルールに変わっているといわれています(参照:馬渕邦美 東大生も学ぶ「AI経営」の教科書(2022)を引用、参照しています)

その新しいゲームのルールは、未来への期待感、社会への貢献度など既存の枠組みを超える技術力を背景に世の中をアップデートする可能性、であるようである(前述、馬渕邦美(2022)P15引用)。

この点について現在は、特にアメリカ、中国に大幅な遅れをとっていると思われる。
しかし、過去の日本の歴史をみると、我が国のお国芸である「ものづくり」において、例えば、ソニー、トヨタ自動車、本田技研工業等々の企業など、過去にイノベーティブな事業を行ってきた歴史がある企業などは、ゲームルールが変わったとはいえ、今でも「技術革新」を起こせば、復活できる可能性があると考えています。

そのほかの企業においても、例えば、今ホットイシューである、NFTやメタバースにおいては、日本が世界的に秀でているコンテンツであるアニメなどは、とても有力なコンテンツになると考えています。
このようなコンテンツについては、先行してメタバースやNFT化を進めること、そして、例えば、NFTに関する法整備等を進めることが重要だと私は思っています(実際はなかなか厳しいとは思いますが)。

馬渕(2022)氏によれば、新しいゲームのルールの最大のポイントは、技術革新であり、その技術革新のキーテクノロジーがAIになっていることは間違いない、と言われています。その理由として、AIは過去のデータを使って「未来をシュミレーション」できるといっております。

このAIは、今までのように、過去のビックデータを使って人間が「類推」だけのものではなく、シュミレーションを行うことができる点で優れているということであるが、確かに、このAIを活用して第1次産業から第4次産業(場足によっては第5次産業)で活用されるようになってくると、世界全体でみても、過去で一番大きな技術革新になるといっても過言ではないのでは、と思います。

このように、遅かれ早かれ、我が国もAIが経済社会を席捲すると思われますが、ここで問題だと私が思うのは以下の点です。
既に当たり前の話ですが、我が国産業全体の99.7%を占めるのが中小企業・小規模企業(L型企業)だということです。もちろん、L型企業でもいち早くAIを導入する企業が出てくると思いますが、大方の中小企業・小規模企業はキャッチアップするのはなかなか難しいという問題が現実的な問題としてあります。

しかし、私は、失われた30年を回復するには、L型企業の革新と、社会課題を解決できサスティナブルに存続できる多くのスタートアップ企業の出現だと思っています。

L型企業においてすべてAIを導入するというのは難しいと思いますが、しかし出来るだけ実現しないと我が国産業は失われた30年を打破することはできないと思います。

この実現についての私が思う1つの処方箋について、以下のように考えます。

すなわち、若い学生に対するアンドレプレーナー教育の充実、そして、個人で革新的な事業を発想し行動していくことはもちろん大事ですが、一方で、これは個人だけの問題としてとらえるのではなく、中央・地方政府といった権力アクターと、民間企業・NPO法人等の非権力アクターが協調・協働して行っていく問題としてもとらえることが必要だと考えます。

小林 章一

小林 章一

早稲田大学大学院法学研究科博士前期課程修了(法学修士)。現役国家公務員。日本ベンチャー学会会員、日本法社会学会会員、日本中小企業学会会員。行政の現場で法律の策定、多くの産業を支援してきた経験、加えて、個人のスキルアップのため幅広い学問分野に従事してきた学術的経験を活かし、日本が直面する問題の解決を目指す「活きた学問」の追求を目指していきたい。「失われた30年」を取り戻し、日本経済再生のカギになるようなオリジナルで核心を突いた知識・情報の発信を行っていこうと思います。

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小林 章一

小林 章一

早稲田大学大学院法学研究科博士前期課程修了(法学修士)。現役国家公務員。日本ベンチャー学会会員、日本法社会学会会員、日本中小企業学会会員。行政の現場で法律の策定、また多くの産業に関わってきた経験、加えて個人としてのスキルアップのため学問分野に従事してきた学術的経験を活かし、日本が直面する問題の解決を目指す「活きた学問」の追求を目指していきたいと思っています。 「失われた30年」を取り戻し、日本経済再生のカギになるようなオリジナルで核心を突いた知識・情報の発信を行うよう心がけます。

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