起業家・事業家がPMFを行うために「行政法・環境法」の知識の必要性について、以下の2つの視点から述べます。
行政法は、内閣提出法と議員提出法を合わせると膨大な数に上ります。ただこれら行政法は以下の特徴があります。
すなわち、同じ公法としての憲法は規定解釈・適用だけで具体的な法的紛争解決は稀であるが、行政法はそうではないということです。
行政法は、国民や企業などの法人に“具体的な権利を与え義務を課す実際の生活に極めて密接する規範”であり、且つ行政を統制する規範となっています。
すなわち、行政法は国民、我が国の法人に、具体的な権利・義務を与え、全てにおいて法的紛争解決できるので、同じ公法でも憲法とは性格・着眼点が違っています。
上述の指摘は当たり前のことではありますが、“行政法”は国民にとり身近でより直接的な性格故、理解しておくべき法律であると考えます。
行政法の射程は、生活者である国民であり、一方で、“経済社会における働き手としての社会人”もちろん起業家・事業家も含まれます。
例えば、行政府に対し許認可申請を行い、許認可がおりないと仕事に重大な支障を及ぼすので、働き手も利害関係者になります。したがって、働き手も行政法の射程に含まれます。
ただし、これら許認可申請業務に係る行政法の知識であれば、日頃からOJT等で教育を受けられている場合が多いです。
一方、対照的な事例として、大企業(元請企業)と取引関係で弱い立場の“下請事業者”との取引の適正が図られているかを、行政法に基づいて指導していると理解しています。
このような行政法は、許認可申請業務のように日頃から教育を受けるべき性格ではないと考えられるので、あらかじめ教育を受けておかないと仕事上支障を及ぼします。
したがって、独占禁止法の特別法である“下請代金法”などの重要な個別行政法も、働き手にその理解・素養をもって、実践を促すような人材になってほしいと考えます。
故に、起業家・事業家にとって、業務を遂行していく上で、行政法の知識・理論を理解していただくことはとても意義ある重要なことだと考えています。
すべての国民・企業が行政法を深く理解することは困難ですが、経済社会生活上重要な規範であるため、特に社会課題解決を図っていくコアな主体となるであろう、スタートアップ企業家や事業家にとって、その理解・素養を持ってもらうことで、そうした情報格差・非対称性を埋め、種々の支援をしていく人材を育成し、羽ばたいていってほしいと考えます。
以上、私はこれら2つの視点から、起業家・事業家がPMFを行うための「行政法」の知識の必要性について述べさせていただきました。
次に、環境法についても同様の観点から以下述べさせていただきます。
私は、修士論文で「環境規制と技術革新の関連性」ついて分析し、「環境保全と経済成長はトレードオフの関係だけでなく、厳格な環境規制は国内企業の国際競争力を高める」仮説を考察しました。この論旨は
以下のとおりです。
スタートアップ企業を立ち上げる過程において、例えば、環境規制が制定するということが起きたとしましょう。起業家にとって環境規制の存在は、普通は損失であると理解されると思います。
しかし、いち早く環境規制をクリアするプロダクトを開発することによって、マーケットにフィット(MF)し、他社よりも先にイノベーティブプロダクトを開発できる可能性が出てきます。
故に、規制は起業家・事業家にとって、上記の意味において、必ずしも損失ではなく、PMFを行う上ではむしろ利益であると考えることができます。
私は、上記を踏まえて、以下のことを提言します。
すなわち、「行政法というより身近な法を起業家・事業家が習得することにより自身を助けることにつながり、適切な協力関係を実現していく」という意味において、そして「環境法という課題を我が事とすることで、起業家や事業家にとってピンチをチャンスに変える」という意味において、「行政法」及び「環境法」の知識の習得が必要であると考えます。